吾輩はスタンスミスである。鼻を近づけるとビニール臭いのである。
ホーチミンのなんちゃって靴屋で買ったなんちゃってニューバランスの靴底が突然ベロっとと剥がれてしまいました。
すこーしづつ剥がれてきて、そろそろ買わないといけないかなーと言う間もなく、一気に見事に分離しました。
そもそも数千円のニューバランスですから、何年も履けるとは思っていません。
それにしても予想以上の短命でした。
靴底はぜんぜん減っていないし、まだまだ綺麗なのです。
Skypeの授業で、『安物買いの銭失い』を教えることがあります。
ベトナムでもデパートの中にある、ナイキやアディダスの正規販売店に行けば、どの靴でも軽く1万円超えです。
この国の平均的な給与からするとこの値段は天文学的とまでは言いませんが、なかなか手が出ません。
ニューバランスが壊れたのは、ガーさんの田舎にいる時だったのですが、街中まで靴を買いに行きました。
田舎町でも靴屋は何軒もあります。
その中の2軒に入って靴を探します。
私は結構、足がデカイので、目ぼしい靴が見つかったらサイズの有無を確認します。
2軒とも有名メーカーの靴が大量に置いてあります。
勿論すべてニセモノです。
オシャカになったニューバランスもそうでしたが、どの靴も良く出来ています。
ナイキのエアーも欲しかったのですが、この手の高機能シューズは直ぐに壊れる可能性大です。
出来るだけ構造がシンプルな物を選びます。
久しぶりにカントリーを履きたかったのですが、見当たらないので、懐かしのスタンスミスにしました。
数千円ですよ。
もちろん革製ではありません。
匂いを嗅ぐと見事なまでのビニール臭です。
このなんちゃってスタンスミスですが、どこから見ても良く出来ています。
東京の街中で履いていたら『ホンモノ』です。
この国で暮らしていると「ホンモノ」って何だろう?と感じます。
バイクに乗っている女性たちは、ルイビトンやシャネルのバッグを背負っています。
正規に買えば、バイク通勤をしている人達の数ヶ月分の収入に匹敵します。
中にはブランド大好きで、生活を切り詰め頑張って『ホンモノ』を買った人もいるかもしれません。
でも、バッグに『これはホンモノです!』と言う札でもつけなければ分かりません。
ホーチミン時代のベトナム人の友人がGUCCIのTシャツを着ていたことがあります。
『これはお姉さんに買って貰ったホンモノ』と教えてくれました。
LEONでジローラモさんが着ていれば数万円ですね。
友人の言うことを信じてホンモノだとしても、それは自己満足でしかありません。
でも、本物のホンモノは身に付けるたび幸せな気持ちにしてくれます。
ロレックスやブレゲの時計は毎朝、腕にはめるたびにウキウキとした気持ちにしてくれます。
ルーベで文字盤や針の細かな装飾を眺めているとウイスキーが飲めます。
ルイビトンのステッチの硬く締まった糸の感触は何とも言えません。
ライカのM3の直角のエッジを人差し指の腹で触るとウットリとします。
さてわたしが買ったスタンスミスと言えば見た目は本物そっくりですが履いてみるとまったくの別物です。
靴としての剛性がゼロなのです。
恐らくはソールからボディまで型に入れて一体で成形しているのでしょう。
構造上必要なメリハリがありません。
分かりやすく言うとグニャグニャです。
ホールド感ゼロです。
これでテニスをしたら確実に足首を痛めます。
『ホンモノの靴』が欲しいのですが、ただ今、貧乏真っ只中なので暫く我慢しましょう!