「東大生の先生になる」の巻
毎日せっせとSkypeで日本語の授業をしています。
生徒さんの年齢や職業などはバラバラです。
6対4で女性の方が多いでしょうか。
また、8対2で日本からの参加が多いです。(残りはベトナムです)
日本で授業を受ける生徒さんの殆どは技能実習生です。
決して多くはない給料の中からやりくりをして授業料を払って日本語を勉強しています。
生徒さんの日本語レベルもマチマチですね。
『これだけ話せれば将来楽しみだなー』から『これじゃ日常生活を送るのも大変だろーなー』までいます。
授業は生徒4人のクラスとマンツーマンのクラスがあります。
マンツーマンは授業料も割り高ですから、より学習意欲が高い人達です。
一度に4人の相手をするもの気を遣いますが、マンツーマンも生徒さんによってはとても苦労します。
普通、マンツーマン授業の場合、運営本部からLINEグループを使い授業予定が先生方に一斉配信され、先生方は自分のスケジュールと照らし合わせ対応出来る授業に手をあげます。
過去に何度か運営本部からマンツーマン授業のご指名を貰った事があります。
『とても煩い、厳しい生徒さんがいるのですが、担当しても貰えませんか?』との事でした。
その『煩い、厳しい』ってどういう状況なのでしょうかね?
当時は何も考えずに引き受けました。
蓋を開けてみると授業に求める物が厳しいのですね。
その女性はニッセイホーチミンの社員でした。
外交員では無く企画開発のような部署だったと記憶しています。
日本語能力向上は会社からの命令だったのでしょう。
授業料は会社負担でした。
そもそも日本語能力検定1級(N-1)を持っているので、ペラペラです。
スクール側が用意したテキストなんて簡単すぎます。
何回か授業をした後、もっと意味のある授業をしましょうか・・・と言う話しになりました。
次回の授業で彼女が用意してきたのは、「安倍首相」のニュース記事でした。
ベトナムの新聞に掲載された、安倍首相のインタビューを彼女が日本語に翻訳したのです。
私が「その日本語」をチェックする授業が始まりました。
私は一応日本人ですが、ベトナムで暮らし始めて早◯年・・・すっかり日本の新聞もニュースもご無沙汰しています。
彼女の翻訳文を見て、文法は直ぐに修正することが出来ますが、安倍首相のコメントそのものについては、オリジナルの内容を知らないと判断出来ません。
予習をしたいので、最低でも授業開始数時間前までには、翻訳文を送って貰うことにしました。
毎回、ドキドキの授業でしたが、全ての授業が終了した後、彼女とは一度食事に行きました。
ご主人も子供もいるので、下心なんてありません。
ただ、こんなに日本語を上手に話す女性ってどんな人なんだろう?と興味があったのですね。
どこの国にも優秀な方っているもんです。
もう一人思い出しました。
この女性もN-1を持っているので、授業引き受けてもらえませんか?と連絡があったのです。
ハイフォン在住でやはり子持ちの女性でした。
前述の人ほどではありませんが、やはり日本語が上手で頭の良い方でした。
何回位授業をしたのでしょうか。
気合を入れて良い授業が出来たと思います。
その後、彼女からは一緒に仕事をしないか?誘われました。
ハイフォンの送り出し機関で働いていたのですね。
わざわざ、ハノイまで車で迎えに来てくれて、学校の見学に行きました。
その後彼女は送り出し機関を退社して、日本語教育のビジネスをしている様です。
そして、数日前の事なのですが、久しぶりに運営側からメッセージがありました。
「授業を担当して欲しい生徒がいる」との事で、希望日程送られてきました。
その授業の幾つかは、既に入っている授業をキャンセルしてまで入っています。
「う〜ん」どんな生徒さんなのか?確認した方が良いのだろうか?
でも、正月前で貧乏なので、何も聞かずに引き受けることにしました。
そして、昨晩、初回の授業がありました。
名前を見ただけでは男性か?女性か?も分かりません。
SkypeのチャットチャネルがOPENになると、生徒さんが登録した写真を見ることが出来ます。
女性ですね。それもオバちゃん風です。
コスモス畑をバックに写っている写真なのですが、「このオバちゃん」どんな人なんだろう・・・
当日使用するテキストを開き、どんな難しい質問をされても狼狽えないように準備をします。
さて、授業開始です。
初回の授業なので、まず、お互いに自己紹介をします。
私は、毎回の事なので、完全に暗記してしまった自己紹介をします。
さて、彼女からは名前や東京在住などを教えてもらいます。
仕事はしていないそうです。
次の瞬間「ヤラレタ!」となります。
ナント!最高学府「東京大学」でウイルスの研究をしているそうです。
地方の駅弁大学ならまだしも、「東大」ですよ「トーダイ」
すでに論文は提出済みで将来は研究者として日本で働きたいとのことです。
筋金入りじゃ〜ありませんか。
授業を引き受ける前に生徒さんのプロフィールなどを確認すれば良かった。。。
その時点で「その生徒さんは、東京大学でウイルスの研究を・・・」と教えてもらっていれば、辞退出来ましたね。
でも、授業を始めて少しホッとしました。
幸か不幸かその生徒さん、あまり日本語が上手ではないのです。
論文も英語だったそうです。
彼女の授業予定表を見る限り、全36回のレッスンが6月まで続くようです。
このままずーっと私一人で担当することになれば、これはまた責任重大です。
色々と苦労することもありますが、人と接する仕事と言うのはやりがいがありますね。